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きみがすき

第33章 *じゅう*

*二宮*




「…別れた……」


少しだけ震えそうになってしまった声。

そう呟いた俺の言葉に…俺と向き合って座る智さんは、小さくこくん。と頷いた。





智さんとイチト、そして潤くんと俺が今居るのは居酒屋。
居酒屋なのに落ち着いた雰囲気で、お洒落。
潤くんがセレクトしてくれた店だ。

ザワザワと聞こえる男女の声や、カチャカチャと食器やグラスがぶつかる音が遠く感じるのは、個室に入っている。というだけじゃないと思う。


…今、別れたって言った?
え?…なんで?
だって、デート楽しかったって、すごく楽しかったって言ってたじゃん…

「…、、」

なんで?とか、どうして?とか、色々聞きたいことはあるのに、言葉が出なくて…


松「大野さん。理由をきいてもいい?」

隣から聞こえた潤くんの優しい声に ハッとし、膜が張っていたような音がクリアになる。


下がっていた視線を上げれば
俺を見て、眉毛を下げた智さん…

…そうだよ。
智さんが、此処に来たのは…そうして話してくれるのは…俺達だからだって思っていいんだよね?
だから今は話を聞こう。俺はそう切り替えて、智さんへ向き直った。


俺から潤くんへと視線を外した智さんは、潤くんの問に「うん。」とまた頷いて
「ニノと松潤は、何処まで知ってるの?」と問い掛けてきた。


松「? 知ってるって?」


大「相葉ちゃんの…前の彼女とのこと。」



……え?

なんで??


たぶん。潤くんも同じ事を思ったんだと思う。
少しだけ向き合って絡んだ潤くんの瞳に、困惑の色が浮かぶ。


…あぁ

嫌な予感はこれか…

「…あの女が関係あんの?」

口を出た言葉は、思った以上に低く自分の鼓膜に返ってきた。


大「……」


「相葉さん、あいつ吹っ切れてなかったの?」


大「え?あ!違うっ!違うよ!
俺と付き合ったとき、もう未練はないって言ってくれたし…」

「でも、別れた理由には関係があるんだ?」


大「それは…」

俺の明らかに変わった声に、大野さんは視線をさ迷わせた後
「……うん…」と答えた。




俺は、あの女が…相葉さんを騙したあの女が、許せないんだよ。



と、

イチ「あ、俺が答えますよ?」

ピリ。とした空気になった空間に流れたのは、そんなイチトの声だ。

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