きみがすき
第33章 *じゅう*
席に着いた時
取り合えずのビールと適当なつまみは頼んだものの
そして取り合えずの乾杯を経てはみたものの、テーブルの上に並んだ飲食に手をつける雰囲気でも、気分でもなくなって…
でもそんな中
気が付けばビールの量を減らしていたイチト。
そんなイチトに智さんは「なんでイチ?」と至極まともな返答をする。
イチ「兄貴の事だから、潤さんにも和也さんにも結局言ってないッスよね?それなら俺と知ってる事は一緒だから。」
俺達に確認の視線を向けてから、智さんへそう伝えた。
大「そうなの?」
松「…うん。俺達が知ってるのはイチトから聞いた事だけ。」
…
そう。
俺達は相葉さんから何も聞いてない。だから相葉さんと、あの女の間で何があったのか知らない。
…事になっている。
相葉さんから『振られた』と報告があってから直ぐだ。
イチトから、相葉さんの最近の行動がおかしい理由を知らされたのは。
イチ「俺も、直接兄貴から聞いた訳じゃないから、詳しくはわからないし、正確じゃない部分もあっかも知んないけど、大概ズレてないと思うよ。」
大「え?相葉ちゃんから聞いてたんじゃないの?」
イチ「聞いてない。俺が兄貴から言われたのは『割の良いバイトって何かな?』だけだから。」
大「じゃぁ誰から…?」
イチ「聞いてねーよ。調べただけだもん。
急に金が必要なんておかしーじゃん。使い途も曖昧。はぐらかすのが下手なんだよ。」
そこまで言って、イチトはビールを飲み干した。
ゴンっ!
とジョッキを、雑にテーブルに置いたイチトの顔は、音たてちゃってごめんね。とでも笑ったは良いけど…その目は正にヤンキー
…
……
そうだ。
イチトは超が付くブラコンだ。2個くらいね。
兄貴の相葉さんが、何かおかしいと思った時に、迷わず…というか、倫理なんて吹っ飛ばして調べてしまうほどの。だ。
…ん?
え?…じゃぁ智さんに会ったのも?
相葉さん伝いじゃない…?
大「調べたってどうやって?」
イチ「んー?人脈?
ボク、知り合いだけは多いから。」
……怖ぇぇ…
今もだけど…お前 当時いくつよ?中坊だろ?
絶対絶対…ぜーーったい!敵にはしたくない奴だよ…
そんでもって、そんなイチトを見てたら、俺のビリっとした感情なんてどっかいってて…
なんか気持ちが冷静になれちゃったよ。