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きみがすき

第34章 *じゅういち*

*二宮*



大「戻りましたー。」

あ、帰ってきた。
智さんは今日は外回り。

「智さん。お帰りなさい。
係長が帰ったら声かけてって言ってましたよ。
第二会議室にいます。」


大「んー?なんだろ?」


「なんか急ぎみたいでしたよ。」


大「わかった。ありがとう。行ってみるね。」
そう返事をした智さんは、鞄をデスクに置いて、帰ってきたままの足で会議室に向かった。





あの4人で会った日から、1週間ちょい。

智さんは、変わりない。
ように見える。

でも
きっと…変わらないようにしているんだと思う。
痩せたのもほんの少しで、それ以外は普段通りだった。






定時後

「係長。なんだったんですか?」


大「ん?あぁ。俺の担当の取引先から、急遽連絡があったみたいで、もう対応したから大丈夫。」


「そうだったんですか。
…あ、智さん今日って…」

小「智さん。終われそうですか?
難しそうなら俺、その辺で時間潰してますよ。」

ん?

大「小林くん ごめん。ちょっと直ぐには上がれないや。んーと…1時間で終わらす。何処かで待っててもらってもいい?」



小「お安いご用意です。
智さんと飲みに行けるなら何時間でも待ちますよ。」

……は?

大「ふふ。そ?
じゃぁ小林くんは上がって。残ってると怒られちゃうよ。」

え?え?

小「はーい。じゃぁ連絡くださいねー。」
そう嬉しそうに答えた小林は、お先です。と皆に声をかけ意気揚々と歩いていく。

そんな小林と、ばちっ。と目が合えば…

小「あ、二宮さん。お疲れ様です。お先です。」
ニッコリと営業スマイルを投げ掛けてきた。

「…お疲れ。」




……

「ねぇ智さん?」


大「ん?なに?」


「小林、くんと飲みに行くの?」


大「うん。晴れて禁酒期間もおわったからね。」
えへへ。と。

…そりゃ俺が禁酒してて、この間の事をきっかけに解禁したけどさ


『イチトは、大野さんが変な奴に持ってかれやしないか心配で、頻繁に誘ってたみたいよ?』

智さんと駅で別れた後、潤くんから聞いた話が甦る。

小林=変な奴

そして
斜め前の、内心 弱っているであろう…

智さん=羊

ダメだ!絶対危ない!

「俺も行くからね!!」


大「え?なに急に?」


絶対!2人キリなんてさせられないよ!

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