きみがすき
第34章 *じゅういち*
「お疲れ様。」
3つのビールジョッキが、ぶつかり合い キンっ。と高い音が小さな個室に響いた。
それの遡って1時間数十分前
.
ニノも来るの?と、智さんは驚いて…そして
「大丈夫かな…。」と一言呟いてから、いいよ。と頷いた。
…
…なに?今の。
俺いたらなんか邪魔?
とか、ひねくれた事を考えそうになったけど、そもそも急に参加する時点で迷惑極まりないんだし、取り合えず一緒に行けるんだからと自分を納得させた。
そして
今日は早目に帰る心持ちをしていなかった俺は、リミットの1時間、いつも以上に集中して仕事をこなした。
で、
小林と合流したわけだけど
まぁ俺を見たときの小林の げっ。ていう顔。
忘れないからな!
.
その小林が予約してくれたっていう飲み屋。
個室。
もう…やっぱり危ないじゃん。
…
……まぁ考え過ぎかも知んないけど
でも何かあってからじゃ遅いでしょ?
って、そんなことを1人で考えてたんだけど…
小「智さんて、△△大出身なんですか?頭いいですね!」
大「いや学部にもよるから。俺はそんなに。」
小「またまたぁ。二宮さんは?何処なんですか?大学。」
「あー俺は…」
そう。俺の存在は無視されるくらいの勢いかと思ったら、意外にも当たり障りなく話はふってくるし、それなりに3人で会話も弾んでいる。
…そーいや俺、ちゃんと小林と話したことなかったな。
案外、変な奴。ではないのかもな。
と、
大「あ、…あれ?会社からだ。」
「電話?」
大「うん。ちょっと出るね。」
勿論 どうぞ。と促がす。
大「はい。大野です。
…いえ、大丈夫です。………え?はい。使いましたけど……あ!」
やばっ!と、ガサゴソと鞄の中を漁り始めた智さん。
大「…持ってます。俺です。すいません。」
その鞄から出できたのは、鍵。
事務的なタグが付いたそれは、外回り用ノートパソコンを保管している棚の鍵だ。
大「20分位で戻ります。すいませんでした。はい。失礼します。」
ピっ。と切った電話。
「返し忘れ…ですか?」
大「うん。すっかり忘れてた……やっちゃったな。」
帰って直ぐ他担当の対応に行ったから…
にしても智さんなら普段はしない凡ミスだ。
大「ごめん。俺 会社戻るね。」
智さんは、鞄を持って立ち上がった。