テキストサイズ

きみがすき

第34章 *じゅういち*

*櫻井*




呆気に取られるとはこのことか

「……おー…い…」

と、なんとなく あっという間に手の届かない、声も届かない距離に行ってしまった智くんの背中に投げてみた。



……

決心したあの顔。
ああなったら、何を言っても無駄。
そうと決めちゃったら、やるまで気が済まない。
頑固ちゃん。


そんでもって
なーにをそんな、責任感じちゃってんだか

どうせ?
俺のせいだ。とか?

俺が会社戻るようなヘマしなけりゃ。とか?

なのに何にもできなくて。とか?


そんな しょーもないことでも考えちゃったんでしょ。


ったく。
そんな過ぎたことを。
詳しくは…そりゃわかんねーけど、これって誰のせいでもないんじゃねーの?

つーか智くんが見つけなかったら、それこそどうなってたかわかんないじゃん。そこら辺の変な奴に連れて行かれてもおかしくないよ?今のニノは。



それにさ…
今日じゃなくとも、いつかこうなる日がきたと思うぜ?
だってニノ。慣れない人に触られんの駄目じゃん。それにちょっとした仕草に敏感だし。
それって、ニノにそうさせる何かが過去に、あったんじゃないかな。


そう思って、車の中で丸まるニノを見れば
くしゅん…。とくしゃみをして

やべ…早くしねーと。

と、俺も車に乗り込んだ。


乗り込む時、ちらっ。と智くんが去っていった方向を見れば、もう姿は見えなくて

ここから店まで結構距離あるよな。とか
あの格好で行って大丈夫かな。とか

思うのは、やっぱり智くんのこと。



…きっと
相葉くんがいるから大丈夫。
あの人は、ニノの言うように少し抜けてる部分もあるけど、決して頭は悪くない。


智くんのこと 風邪引かせないでね。
ちゃんと暖めてやってね。


そんな事を思う俺は…やっぱり過保護。なんだろうな。

いいんだ、もう開き直ってるし。
心配なもんは心配なんだよ。


だから
智くんのこと 頼んだよ。
相葉雅紀。




俺は1度 ふぅ。と息を吐いた。

そして
「ニノ。車出すよ。」
そう声を掛け

バックミラーで下を向いたままのニノを確認してから、俺はアクセルを踏んだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ