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きみがすき

第34章 *じゅういち*

*大野*




ニ「っ!…」

翔くんに毛布をかけられたニノは、1度 声にならない声をあげた。…様に見えて、あっ。てなったけど…

毛布も肩に掛けたままの翔くんの手も、振り払われることはなかった。


櫻「ニノ。立つよ。」
流れるような動作で、でも決して強引でもなくニノを立ち上がらせる翔くん。



……

やっぱり翔くんは…すごい。俺はただあたふたして、ニノに触るのが…また振り払われるのが苦しくて 見てることしかできなかったのに…

櫻「智くん。
ニノの鞄お願いね。」

既に、歩き始めていた翔くんとニノ。

「あ…うん。」
俺はニノの鞄と、自分の荷物を拾って2人の後に続いた。



ピッ。音と共に開いた車の後部座席。
翔くんは「ちょい待ち」と、またどこかから取り出したバスタオルを座席に敷いてニノを座らせた。

ニノはあれからずっと黙ったまんま。


櫻「智くんも後ろに乗って。このままだと2人共明日には風邪引いて寝込むよ。」
そんな言葉と共に、そ…。と俺の頬っぺたに触れた 翔くんの暖かい手。
「ほら。こんなキンキンに冷えてる」と心配そうに笑う。


自分では気が付かなかったけど、体は冷えてるみたいで…ということは、ニノはもっと冷えてて……

後部座席にちょこんと座っているニノを覗けば…

…あ……その瞳からは今にも涙が溢れそうな…



…なんでこうなった?
俺が…抜けなかったらこんな顔、ニノにさせずにすんだのかな…
小林くんの、電話越しの心配そうな…そして元気のない声…
2人の間で何かあったんだとは思う

ニノ…今何思ってるの…?

ねぇ俺に何ができる?



……

………

俺…何やってんだろ…
大切な友達が…辛いときに何もできてない
翔くんまで巻き込んで


櫻「? 智くん?どした?」

いつも しょーがねーな。という顔をしながらも、助けてくれる翔くん。
俺は…




……

「翔くん。」


櫻「ん?」

今の俺に出来るのは…これ。

「ニノのことお願い。」


櫻「え?」


「…俺、松潤のところに行ってくる。
翔くんの家に行ってって、ニノが待ってるって言ってくる。」


櫻「は?え?なん…ちょっ…智くん!」

そんな、きっと止めようとした翔くんの声を
背中に聞きながら

降った雨水でキラキラと街の光を反射している通りに、俺は足を進めた。

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