きみがすき
第8章 *ナナ*
「あい…」
『相葉ちゃんが風邪引いちゃうよ』
って言いたかったけど、
相「貸してあげる。
だから、…またお店に遊びにきて?」
って首を傾げて俺の顔を覗きこむ。
「…っ。」
俺の胸の辺りが、ぎゅうってなる。
なに?
思わず胸に手を当てる。
そこには、いつもより速い俺の心臓。
なんで速くなったのかわからなくて、
…いや、わかる。
俺、嬉しいんだ。
また、来てって言われたことが。
だって、こんな寒いのに、
さっきまで震えてたのに、
今は相葉ちゃんが貸してくれたマフラーが、
暑いくらいに感じる。
「…マフラー、ありがとう。」
やっと出た精一杯の返事。
それに、満面の笑みで返してくれる人。
そこから、駐車場までの道のり。
特に会話はなくて、
俺はというと、今も続いてる
この胸のドキドキはなんだろうって、
ずっと考えてた。
*****
「送ってくれて、ありがとう。」
相「いいえぇ。
こっちこそ、ほんとにありがとう。」
送ってもらっている車中。
やっぱり気になってた、松潤とニノのこと。
相葉ちゃんは、
「連絡がないってことは、上手くいったってことだよ♪」
ニノちゃんの天邪鬼が爆発してなければね。
と、くふふっと楽しそうに笑った。
そして、
それでもあの二人は大丈夫。と付け加えた。
俺には、わからない事情。
でも、相葉ちゃんが大丈夫っていうなら、
大丈夫なんだろうなって思った。
**
俺は、どうしたいんだろう。
願わくば、
『幸せになってほしい。』
なんて、無責任な言葉がもれる。
言葉と共に、白くなった息を見送って、
始めての匂いがするマフラーに顔を埋めて、
アパートまでの道のりを走り抜けた。