テキストサイズ

きみがすき

第9章 *ハチ*

*櫻井*




ピンポー…ン


人が来た事を知らせる
聞き馴れた機械音

パソコンのキーボードを叩く手を止め
眼鏡に手をかける


『…遅かったな。』

ふぅ…
と、溢れた息はきっと
これから部屋に来る人への緊張。

眼鏡を置くと、コトっと
静かな部屋に音を響かせた。



「はい。いらっしゃい。」
ドアを開けた先にあるのは
見馴れた君の顔。

大「突然、ごめんね。」
そう言って、少し申し訳なさそうに眉を下げた。


****


それは2時間ほど前。
苦手な洗濯をして一段落ついた時、


ソファの上で俺を呼ぶ携帯。
誰だ?とディスプレイにうつる
智くんの名前。

…珍しい。
いつもはメールが多いから
何か急用か?
と考えを巡らす。

疑問と、少しの心配をしながら
通話ボタンを押す。

「も…」
大「もしもし翔くん?今家?」

いや、早くね?
もしもしも言えてないけど。


「…はぁ、家だけど。」

大「今から行くから。」

「は?え?なんで?」

大「話がある。」

「え?話って…」
なに?
と俺の話が終わってないうちに
切れた電話…。

なんなんだよ!こいつは!
俺の都合は?!

智くんの自分勝手な行動に
若干イラッとしながらも
有無を言わせなかったほどに
家に来るという智くんの様子に
やっぱり心配にはなる。


智くんとは、一昨日行きつけの飲み屋で
会ったばかり。

素面で会うのは1ヶ月以上ぶりだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ