テキストサイズ

きみがすき

第9章 *ハチ*



***


大「うー寒かったぁ」

外の気温とは別に智くんから
ヒヤッとした空気が、俺の頬を掠める


よく見ると、その筋の通った鼻も、
耳も、寒そうに赤くなっている。

上着に隠れて殆ど見えない細い指には、
手袋はなくて、いつもより血色が悪い。


「あなた…ずっと外に居たの?」

大「…んー?ちょっとだよ。」

ちょっとって感じじゃないでしょ。

「今、温かいの入れるから。」
取り敢えず温かい物をと、
智くんをリビングに通しながら
エアコンの設定温度を上げて
キッチンへ向かう。

ちょこんとリビングの床に座る智くん。



智くんのコーヒーと、
自分用のコーヒーを持って
俺も、ソファじゃなくて
智くんから少し離れた床に座る。


「どーぞ。」

大「ありがとう。翔くん。」

「いーえ。」

大「…。
もしかして仕事してた?」
ローテーブルの上を見てたずねる。

「もしかしなくてもしてたよ。」

大「…急に来てごめん。」

「ふっ、今更だから智くん。」

大「ごめん。」

「いーよ。智くんに振り回されるのは
慣れてるからね。」

大「え?そんなことないでしょ。」
真面目に驚き顔の智くん。

「そういう無自覚なところ。
振り回されっぱなしだよ。
ほら、コーヒー飲んで。」

大「…俺だって、色々考えてるもん。」
とかなんとかブツブツ言いながらも
素直にコーヒーを飲む智くん。


だんだんと顔の血色が良くなってきたな。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ