きみがすき
第10章 *キュウ*
ぼこぼこ…。
ふと思い返すと、出社して早々、俺に引っ張られた大野さんは、意味もわからず怖かっただろう。
「急に引っ張ってきて、すいません。」
途端に後先考えずに行動してしまった自分が恥ずかしくなる。
大「ニノって、あれだよね。猫っぽいよね。」
「え?ネコ?」
前を向くと、ふふっと微笑む大野さん。
「心配。してくれたんでしょ?
でもね、これは最後は嬉し涙になったから大丈夫。」
心配してくれてありがとう。と、
くしゃっと俺の頭を撫でた。
「…し、仕事に私情を持ち込まれても、困るので。」
なんだか大野さんの言葉がくすぐったくて、思わず可愛くない返事をする。
大「くははっ!やっぱり近所の猫に似てる。
松潤も手を妬きそうだね。」
「っなっ!なんで潤くん?!」
大「え?上手くいったんでしょ?」
なんで?!俺、何もまだ言ってないのに!
ま、まぁ、答えはYESなんだけどさ。
大野さんには迷惑かけたし、ちゃんと伝えようとは思ってたけど。
大「さっきデスクで、一人でにやけてるニノ見て、あ、上手くいったんだなって。
当たりでしょ?」
顔がボンっと熱くなる。
俺…、もう自分をポーカーフェイスなんて思うのはやめよう…。
大「松潤の事となると、ほんと分かりやすいよね。」
よかったね。おめでとう。
と、また優しく頭を撫てくれた。
『ネコじゃないし。』って思いながらも、こうやって俺達の関係を認めてくれる人がいて嬉しい。
ちゃんと言わないとって顔をあげると、
まるで自分のことのように嬉しそうに笑う大野さんと目が合う。
「大野さんと、櫻井さんのおかげです。
ありがとうございました。」
顔は熱いままだったけど、大野さんの笑顔につられて、俺も笑顔になった。