兄達に抱かれる夜
第10章 可愛がって貰えたみたいだね
朝早くに身支度して、スーツを着て、外出をする翔太、仕事で人と会う約束をしているようだ。
お見送りをして、手を振って寂しい気持ちを抱えて、家へと戻り、玄関前で、和兄様に出会った。
気だるい雰囲気で、少し機嫌が悪そうに、こっちをじっと見ている。
「和兄様おはよう」
とりあえず、挨拶すると、
「……昨夜は翔太に可愛がって貰えたみたいだね?」
和兄様の瞳が妖しく耀きながら、あたしに近付く。
相変わらず、彫りの深い美形、いつも笑っている和兄様が、真面目な顔をすると、ぞくりとしてしまう。
「朝からずっと、恵麻の顔を見てなくて、こっちは心配してたのに……」
和兄様が近付くから、後退りしてしまい、玄関先の壁に背中がついてしまう。
すぐ傍にある、大きな木の葉が、あたし達の姿を隠すようにして、揺れ動き顔にバサリとかかる。
「……まるで、新婚生活みたいだったね、俺の前でそういうの、やめてくれる?」
和兄様の鋭い瞳の中に、寂しそうな影が揺れていた。
「ごめんなさい、和兄様」
「そんな言葉が、聞きたいんじゃない……ただ、君が、翔太の前で、あんな顔をするんだと思って、妬けちゃっただけ」
和兄様のしなやかな指が、あたしのあごに乗せられた。
冷たい指、冷たい、唇がそっと重ねられた。
「仕来たりは、本来なら夜にはじめるものなのに、ずっと恵麻を独占するなんて、ずるいよね。
まあ、そんな決まり、守ろうとする奴なんて、いないけど」
確かにそうだ、本当なら、夜に兄様があたしの部屋に行くようになっているとは聞いたけど。
お母様の時は、使用人が強引に、お父様を連れて行っていたようだ。
だけど、お父様はほとんど何もしなかったらしくて、それを見かねたお祖父様が強引に通ったようだ。
『あの人は最初から、あたしをただの妹としてしか、見てくれてなかったのよ、それを大事にされているんだって、勝手に勘違いして、馬鹿だった、だから、私の方が行動するしかなかったのよ』
花嫁として迎えられたのに、お父様に女として見て貰えずに、お祖父様にいいようにされて、仕事で忙しそうなお父様と擦れ違い続ける。