兄達に抱かれる夜
第1章 お願いっ、嫌なのっ、あたしは……っ
ニヤリと笑いながら、次から次へと口の中に運ばれて、結局全部食べらされてしまった。
美味しかったけど、文句を言うあたしに、笑いながら、頭を撫でられた。
「悪い、可愛いから、つい」
クッと笑いながら、また、新しいケーキを出そうとする翔太兄様。
あたしは短い悲鳴をあげて、慌ててそのケーキを取り出して、翔太兄様の綺麗な口元にグイと寄せた。
フルーツのタルトはいちごよりも、大きなフルーツが乗っている。
タルトを口元にぴたりとくっつけると、翔太兄様は眉を潜めながら、渋々口を開けた。
向かい合って、少し屈んでタルトを食べる翔太兄様。
あれ、なんか、可愛い……。
兄様なのに……。
タルトを食べる翔太兄様に見惚れていたら、急にケーキを持っている両手を掴まれて、引き寄せられた。
翔太兄様の切れ長の瞳が一瞬、熱く輝いて見えた。
綺麗な顔立ちが近付いて、唇が寄せられて、あたしの唇に甘く重なった。
「んっ……」
持っていたケーキがぽろりと落ちそうになり、翔太兄様がケーキを持って傍にあるテーブルの上に置くのが見えた。
少しだけ、重なった唇。
すぐに離れて至近距離で見つめられて、また、ゆっくり唇が重なった。
重なった唇が熱く感じて、じわりとした熱が全身に広がった。
また、すぐに唇が離れて、翔太兄様の体がスッと離れていく。
「おやすみ」
そっと呟く声が掠れていた。
呆然としたまま、その広い背中を見ていた。