兄達に抱かれる夜
第1章 お願いっ、嫌なのっ、あたしは……っ
「はあ〜っ、疲れた〜」
お茶のお稽古が終わって、自分の部屋に入って、着物姿のまま、寛ぐ。
畳の上にごろんと寝転んだ。
「恵麻〜?いるか〜」
襖の外から、翔太(ショウタ)兄様の声がした。
「は〜い」
返事をすると、ガラリと襖が開いて、翔太兄様が入って来た。
茶髪のツンツンしたおしゃれな髪型、切れ長の瞳はどこか鋭く見える。
「なんだ、お茶の稽古があったのか?」
あたしのぐだぐだな格好を見て、ニヤリと笑う。
「足が痛い〜、疲れた〜」
畳の上でゴロゴロ転がると、あたしの顔の前にケーキの箱が置かれた。
「甘いモノ、食うか?」
体型の維持まで厳しく言われて、間食は禁止なんだけど、翔太兄様はちょこちょここうして、お土産を持って来てくれた。
学習院大学、国際社会科学部に通う翔太兄様は、昔から家の習わしを嫌って、早く自立したいと反発ばかりしている。
株とかで資産を運用して、こっそり起業しているらしく、良く出張に行く。
会社も何件か持ってるそうだ。
あたしにだけの秘密だ。
ケーキの箱の店の名前はいつも、聞いた事がない名前で、それが時折寂しく感じた。
「わぁい、ありがとう」
がばりと身をおこして、お茶の用意をする。
「疲れてんだから、そのまま、食えば?」
食器の用意をしようと思ったのに、翔太兄様がケーキの箱を持って、あたしの背後に立つ。
「え〜?でも、お茶は飲みたいよ」
紅茶の食器を2つ用意していたら、翔太兄様がケーキを取り出して、シートをペラリと剥がし、そのまま、あたしの口元に持っていく。
「んっ……」
あたしの好きな、いちごのタルトが口元で誘うように揺れている。
ぱくん、口を開けてかぶり付き、いちごがぽろりと落ちそうになり、翔太兄様が指で、掬って自分の口にいれた。
「ほら……こぼりぇる……」
零れる。
もぐもぐしながら、呟くと、ニヤリと笑って、また、あたしの口元にグイと寄せられた。
「ん〜っ」
また、ぱくん、と口を開けて、翔太兄様を振り返って抗議するように、睨むのに。