兄達に抱かれる夜
第9章 こんなこと、もうやめて。
ふわふわして、暖かい。
窓の外から、陽だまりのような光が、ベッドの中で抱きしめ合う、あたしたちを照らしていた。
全裸で抱き合ってそのまま、眠っていたらしい、目を開けば、翔太兄様の胸板が目の前にあって、びっくりした。
暖かい温もり、心臓の音。
顔を上げると、目の前に翔太兄様の綺麗な顔があって、可愛い表情で無防備に熟睡していた。
どうしてだか、胸が熱くなった、目頭が熱くなって、ベッドの上からそっと下りる。
服を着替えていると、ドアの外から、使用人が朝食を知らせる声がして、やんわりと断ってしまった。
部屋の鍵はちゃんと、かかっている。
今はもう少し……翔太兄様のこの寝顔を見ていたい……。
暫く翔太兄様の寝顔を見守り、ピルを飲む時間だと気付いて、いつものように、机の引き出しから、錠剤を取り出す。
冷蔵庫から、ミネラルウォーターを出して、コップについで、口の中に錠剤を入れようとして……。
その小さな錠剤を掴んだ指が、大きな手のひらに包まれた。
ぎゅっと、掴まれた、右手。
ハッとして、顔を上げる。
「何を……飲んでいるんだ?」
翔太兄様だった。
いつの間にか、あたしの目の前にいて、裸で鋭くあたしの顔を見下ろしている。
咄嗟に誤魔化すように笑う。
「別に何でもないよ、ただのサプリメントだよ?」
「有馬家の大事な嫁に、訳の分からない、サプリメントなんか、飲ます訳ないだろう?
俺がそれが何かを、分からないとでも、思っているのか?」
翔太兄様の大きな手が、あたしの手の中にある、小さな錠剤を取り上げて、ゴミ箱の方に放り投げた。
恐くて体が震えて、涙が溢れてしまう。
そのあたしの表情を見て、翔太兄様が優しく笑う。
「それをずっと使い続けるんだ、恵麻、ただし、俺との夜は決して使わせない……お前は俺との子供を産めばいいんだから」
ピルの使い方なんて、本当は良く分かってない。
ただ、毎日決まった時間を守って、飲み続けていただけで。
一日飲まないだけで、妊娠するとか、そんな事は分からないけど。
「今日は飲むな」