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愛すべき存在

第1章 愛すべき存在

 私が家に入ると、春斗がそれに続く。そして、二階の自室に上がる。春斗は本棚や壁に貼られたポスターをまじまじと見て、一言。

「本当に少女マンガ好きなんだね」

「うんっ! でも、汚いし恥ずかしいからあまり、部屋、見ないで欲しいな」

「そうかな? 全身鏡とか棚とか女の子らしくて可愛らしいと思うけど」

「ありがとう」

 そんな他愛ない話を延々と続けた。そして──。

 春斗は突然私にキスをした。

「っ……」

 春斗はキスしたまま、私の胸に手を当てた。私は泣きそうになる。どうして、なんで、どう……して? 嫌だ。イヤだ。体が心が拒否をする。和樹の感覚や香りを消されたくない。

「やっ……」

「ゴメン……嫌?」

「帰って。やっぱ……和樹が好き。和樹の温もりを忘れられない。春斗に塗り重ねられたくない」

 残酷なこと言っている。だけど……。

「分かった。けど、もしダメだったらその時は言って?」

 春斗は優しくしてくれる。その様子に胸がちくりと痛む。

「ありがとう」

「じゃ、バイバイ」

 春斗はそう言うと私の家を後にした。春斗、ゴメン。

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