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愛すべき存在

第1章 愛すべき存在

 春斗が帰ってからすぐに私は和樹に電話する。留守電になった。

「明日の夕方六時、初めて会った場所に来て下さい。どうしても伝えたいことがあります」

 私は留守電にそう入れた。和樹、信じているよ。

 そして次の日──。

 初めて会った場所でその時に着ていた服に身を包み、和樹を待っている。

 夕方六時。和樹は訪れない。連絡はない。私はそれでも待った。

 八時、それでも来ない。私はその場に座り込んだ。

 和樹……和樹……和樹……。

 私は無意識に携帯のボタンを押した。
「もしもし?」

「和樹……ゴメンなさい。来てくれないって分かってた」

 涙が零れ落ちる。電話相手は無言だ。

「でも……でもね。好きだった。好きなの。会いたい、会いたいよ。あんな終わり方、嫌だったよぉ」

 最後に見た、また明日なって言った和樹の顔。複雑だった。今さら気付いた。

「沙希? 俺、今から行くよ」

 和樹は、やっと話した。……あれ? 和樹の声じゃない。

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