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第6章 Still love you

((梓side))








西「…なんで電話に出ねえんだよ……」








電気をつけていなかったため顔はよく見えなかった







いつもより声が低い








でも,大好きな人くらいすぐにわかる








隆が立っていた








「ごめん…スマホの電源…切れてたみたいでっ…」

西「…なんで電気つけてないの?」

「ちょっと…疲れてて…」

西「…そっか…」








ギュッ








隆はいつものように優しく抱きしめてくれた







西「会えなくて…ごめんね」

「うん…寂しかった…」








最後だから








最後にするから








寂しかったって伝えたかった








布団に入るなり,隆からのキスが降り注ぐ








隆「ねえ梓,なんか隠してるでしょ」








ほらね、隆はすぐに気づく人だ








「なんにもないよ(笑)」

隆「俺といるのにうわの空って感じだけど?」

「ちょっと具合悪くて…」

隆「そうなの?大丈夫?」

「うん,だいぶ良くなったよ」








ごまかせたかな








ちゃんと笑えてるかな








隣で寝る隆の顔に触れる








やっぱり,かっこいい




















音を立てないように荷物をまとめる








洗面所に置かれている2本の歯ブラシ








隆の家なのに常に置かれている私の服








すべてに隆を感じた








キーケースから鍵を外し,机の上にそっと置く








最後に寝室を覗こうと思ったけれど,やめた








隆が起きてしまうかもしれない








また,甘えてしまうかもしれない








それが怖かったからだ








バスに乗って,20分ほどで着いてしまう私の家








隆の家で生活するようになってからはあまり帰ってきていなかった







キャリーバッグを開けると溢れる隆の匂い








自分で決めたことなのに








少しの匂いもひどく強く感じてしまう







ただひたすらに涙を流した

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