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密猟界

第7章 美しき獣たち

……(チャンミン─)高い尖塔。(チャンミン。…だめだ)鳴り響く、鐘─それに絡みつくように轟く雷鳴…。(チャン─、ミ…ン)背の濃い紺のリュックを弾ませ、長い脚が前を走る。(そっち、だめだ…行っちゃ─)塔の聳える灰の建物へ背中は消えかける─。(いけない)長身の後ろ姿が、磁石に吸い込まれるように黒ずんだ灰の扉のなかに入った。(チャンミン…!)叫んだつもりの声は、雷と鐘の音に遮られる─。遠く、野獣の咆哮…。…嘲る響き…。



 ──自分の叫び声で、目が覚めたらしい。…くらくらする頭を起こした。
 テーブルの上に、白い丸い皿。真ん中から、粉々に割れていた。椅子から立とうとして、身体が床に倒れ込みそうになる。……ふらつきながら、椅子を離れた。床に散った白い破片をよけて、歩き出す。
 (チャンミン)テーブルクロスの白が、霞む…。(チャンミン)天井のシャンデリアも白く光る。「チャン─ミン」声が、ようやく出た。喉が枯れて、乾いた声だった。

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