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『ヒボクリトの贖罪』 大阪在住40男とメイド達の非日常性活

第14章 二人目のM

『忘れるということ』は
人間にとって最大の能力かもしれません。

たぶん私も
全てを覚えていたら
今まで生きては来れていないと思います。

彼女との時間も
この6年間で都合の悪いことは忘れてしまっています。
今私の中に残っているのは
自分勝手な美しい思い出だけ。

出会った時の彼女の気まずそうな顔
彼女と行った地鶏を食べさせる梅田のはずれの焼き鳥屋
彼女に見せた企業名と本名の入った名刺
彼女に渡しはしなかった名詞

その後のホテルでの出来事

その日に帰ったのか泊ったのか
SEXをしたのかしなかったのか
そんなことは覚えていないのに
彼女が帰り際に
私のものを愛おしそうにしてくれた景色だけは
はっきりと覚えています。

かなりの時間
彼女の肉づきの良い唇が
丁寧に私を包み込む姿を。

記憶はここで終了。

それから私は
なんらかの理由で彼女と6年間会わないまま。

しばらくはSNSを訪れては足跡を消していましたが
彼女に彼氏ができ、幸せそうな姿を見るのが辛くなり
やがて遠のいて行きました。


その後、私はしばらく誰ともSEXをする気になりませんでした。
彼女のことばかり考えていました

当時更新していたブログも止めてしまいました。
彼女のことを書く気力もありませんでした。


それから数か月か数年か経ったある日
ブログを消そうと久しぶりに管理ページにアクセスしました。

一通のコメントが入っていました。

『ジンさん 会いたいです。そばにいて欲しいです。』

私は慌てて、その数か月前に届いたコメントに返しました。

『Mさん 大丈夫ですか?何かありましたか? 
 心配です。連絡ください。』

そのコメントの後に
彼女のメッセージが続くことはありませんでした。

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