テキストサイズ

Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

『こんにちわ~』

『おぅアイル!おかえり~』



受験勉強の傍らで私は
祖父の病院によく出入りしていた。


正確には、亡き祖父の病院だった…
大きくなった病院。


〃オカエリ〃と私を迎えてくれる人


葛城 爽太さん。



私はオーナーである父の娘だったから(?)
祖父の亡き後に雇われて入った院長に
うるさく言われることもなく

自由に出入りしては
裏方でお手伝いしたり

ソウタさんを初めとする
獣医師たちに色々教わって
ここでも勉強していた。



『…ソウタさんが
院長になってくれたら良かったのに…。
こんなデッカイ病院…。
カタチにばっかこだわって、パパってば』



ある時にはこんな風にぼやいてみたり。



『フフン…カタチにこだわってるのは
アイルの方じゃないのか~?』


『え…?どうして…』



祖父の亡きあと
父は祖父の家…つまり
私の幸せな思い出のつまった家を取り壊して
病院を拡大した。


父には父の考え、思いがあったと思うけれど
幼い私は寂しかった。

ダダをこねたり、父を憎んだりなんて
もちろんしなかったけど
ただただ…さみしかった。




そんな中で、祖父の代から交流のある
このソウタさんは

私にとって貴重で大切で…
古くからの友人のようでありながら

家族のようで…兄……いや、父のような
私の良き理解者であった。



『誰がどこで経営してようが
院長してようが

俺は俺のやるべきことを
信念をもってやるだけだ。

それで良い…ちがうか?』



『…うん。そうだね。肝に、命じマス!』


ソウタさんとのこんな時間は
いつも楽しかった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ