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Best name ~ 追憶 ~

第3章 私の大切な人

ザブ・・・ザブ・・・ズブッ・・・




水の中は冷たくて



だけどフワフワとしていて



心地よくさえ感じた。






バシャバシャ・・・





やっと洗い流せる・・・



水に浸かって
身体を洗いながら奥へと足を進める。









『アイルーーーーー!!!』












・・・。




誰かが私を呼ぶ。




こわくなって振り返る。





もう・・・追いかけないで。





・・・。





暗くて、よく見えない。





あの声・・・あれ





あの白い道の夢の声と・・・






・・・。






どちらにしても



もう・・・追いかけられたくない




コワイ思いも、したくない。




何かに怯えて・・・生きてたくない。





早く・・・もっと・・・早く。







『アイル~~~~っ…』






それでも私を追ってくる・・・







いや・・・もう許して


私は・・・自由になるんだから


もう許して・・・逃がしてほしい。





『アイル……っ!』


そしてついに

追ってくる手が私を捕らえた。


『・・・っっ』




ところが私を追ってくる手・・・

それは




冷たい水に沈み行く私を捕らえたのは

悪魔ではなく







あたたかくて 大きな・・・


大好きな


あの手だった。

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