無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

だけど私は、なにも真っ暗な幼少期を過ごした訳ではない。

もう一人の肉親である祖父がいてくれたから。

自宅兼で動物病院をしている獣医だった祖父。

思えば私の家族…経営者一家である。

おかげで私は何不自由なく育ったのだと
つくづく思う。

いつも私を気にかけて、可愛がってくれた祖父。
遊んでくれたり、色んな所へ連れていってくれたり。


『おや愛留？またお母さんに叱られたのかい？』


家のドアの前で座り込んで泣いている私に

たまたま？…必然？

通った祖父は、いつも私に優しく声をかけてくれた。

大きな、あったかい手で
私の頭を撫でては、なぐさめてくれた。



『さぁ愛留、もう暗くなる。おうちに帰ろう』

『いやだ…。アイルはおじいちゃんといる。
ママは怒ってるもん』



『おじいちゃんが一緒にママに謝ってあげるから
もう泣くんじゃない』

そう言っては祖父は呼鈴を鳴らし
母と話をして私を家に帰してくれていた。

私をなぐさめつつ、母のしつけをただの一言も責める訳でも上から何かを言うでもなく
柔和に…穏やかに…。

神業のようだった。

幼い私にとって、おじいちゃんは
まるで魔法使いだった。