TIME is MONEY
第5章 scene Ⅴ
項にあった唇が耳の後ろに移動した
後ろからでもピチャリと湿った音が伝わってきて肩が揺れる
「可愛い…」
また雅紀が囁くから、更に顔が熱くなる
それまでも、優しく触れる事はなかったとは言わない
だけどその時に “言葉“ はなかった
雄の目は向けられてたけど、俺の羞恥を煽る以外の言葉は発してない
“可愛い“ ってのは何回もある
だけどそれだって、煽る為の手段だった
「…どうして欲しい?」
雅紀の手を掴んだ俺に、声のトーンを落として囁いた
恥ずかしくて小さく首を振る俺にクスッと笑うのが聞こえる
「…言ってごらん、かず」
こんな、口調まで変えるのは狡い
いつもみたいに “言えよ“ って言われれば俺だってねだれるのに
まるで本当に愛されてるみたいな、変な錯覚を起こしそうだ
「やだ…っ」
再び雅紀が笑う
「言えない…?」
恥ずかしさに涙が滲む
どうして言葉ひとつにこんなに翻弄されるのか分からない
「…恥ずかしがるかずも、可愛い」
ほらまた
……そうやって俺を掻き乱す