TIME is MONEY
第7章 scene Ⅶ
でも今日は違う
雅紀の言わんとする事くらい分かる
「情報、全部これに移したから」
“何も残ってなかったでしょ“
そう言って目の前に翳されたのは、緑色のUSB
「気付いてないと思った?」
それをわざとらしく揺らしながら雅紀が笑う
「いつ…移した?」
昨日まではあった情報
しかも昨日は一緒にいた
あの量をそんな短時間で出来る訳ない
「かず、あそこまで調べといてそれ聞く?」
クスクスと声を出して笑い始める雅紀は別人のようだ
あの、逆らう事を許さない鋭い瞳のもう一人の雅紀がそこにいる
「…多分、翔ちゃんはそこまで知らないと思うけど」
雅紀は何を言おうとしている?
背筋に冷たい汗が辿り落ちるのを感じたけど、もうどうしようもない
「俺が、ホントに偶然にかずを拐ったと思った?」
「……違うのか」
一層笑みを深くした雅紀
「さあ?」
「ここまで来てとぼけんなよ…」
「ふふ、かずがここまでうろたえてるの初めてかも」
頬杖をついて首を傾げるのが憎たらしい