TIME is MONEY
第1章 scene Ⅰ
固まってしまった俺を雅紀が見上げている
「かず?」
「何だよ」
「…殴るんじゃないの?」
「……」
“殴るなら殴れ“ と言わんばかりの口調
へらへらした顔が、少し真顔になっている
だけど俺は頭が真っ白で何も言葉が出て来なくて
…とは言え、のこのこ降りるのは悔しいからしたくない
とりあえず睨み付けるのだけは止めずに
フリーズした脳みそを何とかフル回転させようと必死になった
…なったけど、そう簡単には動かないのがお約束って奴で
困ったぞ
いつまでこうしてればいいんだ
胸ぐらを掴んだ手も、疲れてきたし
雅紀の腹に全体重を掛けるのも何だか申し訳なくて、中途半端に腰を浮かせてるのも失敗した
この体制、かなり辛い
これなら最初から思い切り乗っかっておくべきだった
「かなり疲れてきたんじゃないの?」
雅紀がククッ、と笑う
…あっさり見破られてるよ、俺
「…足、プルプルしてるみたいだけど?」
「は…っ気のせいだろ」
負けじと笑い返す
「ふーん…」
上乗せするように更に笑みを深くした雅紀が
「うわっ!!」
突然俺の膝を押して、体のバランスを崩れさせた