TIME is MONEY
第3章 scene Ⅲ
雅紀に手渡されたのは、所謂礼装と言うやつだった
もちろん俺は持ってないから、恐らくこいつが調達したんだろう
新品ではないけど、古い感じでもない
しかも何故かサイズはぴったりだった
黒いネクタイではないから、弔辞ではない
白、と言う事は多分結婚式とかそっちだろう
タクシーに乗って、ようやく告げられた依頼内容は大方予想通りだった
《ナイトウェディングの急なキャンセル客の穴埋め》
何でも友達の少ない新郎の招待客が2人、ドタキャンしたらしい
それでプライドを保ちたい新郎が慌てて頼んできた……
って、何だそのちっちゃいプライド
たかが2人いないくらい、どうでもいいだろ
そりゃ、こっちにしてみれば金になるし
披露宴ならただで飲み食い出来て、ただ笑ってりゃいい
余計な事さえ喋らなきゃいいだけ
あらかじめ、依頼者からは “趣味の友達“ と言う設定で頼むと言われてたのと
この趣味仲間は他にいないから、知らない顔でも大丈夫だと聞かされてたのもあって
あまり深くは考えてなかった
ただ、雅紀はタクシーに乗って俺に説明した後から
…何となく険しい表情をしてるのが気になっていた