TIME is MONEY
第3章 scene Ⅲ
タクシーが会場に着いてから、中には入らずあまり人目の付かない場所に歩いて移動した
雅紀なりのやり方があるんだろうと
俺もそれに従って付いていく
「披露宴が始まるギリギリに入るから」
「あ、そう」
別にそんなのはどうでもいい
俺が気になってるのは、雅紀のその表情だ
いつも仕事の時は、何処か楽しそうにしてるのに対して
今日の表情は何かを考え込んでるように見える
「あのさ、かず」
さっき買った缶コーヒーを置いた雅紀が、ふいにこっちを向いた
「…?」
ちょうど俺もそれを口に入れてたから、目だけを雅紀に移す
「なんか…嫌な予感がする」
その雅紀の呟きに、飲んでいた手が止まった
なんだよ、嫌な予感って……
「はっきり分かんないんだけど、なんか……」
「なんだよ、それ」
確かに、分からないもんは分からないんだろうけど、その歯切れの悪い言い方がムカつく
まあ仕方ない
雅紀に良い感情なんか持ってないんだから
「とりあえずさ、いつでも逃げれるようにしといて」
「は?」
逃げる?
金の心配じゃなくて、逃げる心配?
なんかやだなぁ…
帰りたくなってきた