TIME is MONEY
第3章 scene Ⅲ
会場の中は、着飾った女の子や、礼装の男どもがわいわいと華やいだ雰囲気になっていた
ただひとつ、気になったのは
普通いるはずの新郎新婦の両親らしき人がいない事
列席者に、誰1人年配者がいない事
友達だけの披露宴ならあり得るんだろうけど
どうにも雰囲気が腑に落ちない
「なあ、雅紀…何かおかしくないか?」
「やっぱり?」
席に着くのを躊躇してたその時
「…何で櫻井と一緒じゃないの?」
後ろから、突然声を掛けられた
雅紀が慌てて振り返る
「お前……」
声を掛けた人物を見て、雅紀の顔色が変わった
同じく礼装している、長身の男
女が群がりそうな容姿をしてるけど、何とも言えない嫌な空気を纏っている
「それじゃ困っちゃうんだけどなぁ」
どことなく馬鹿にしたような物言いに、俺が思わずカチンと来た
「翔じゃなくて悪かったな」
「かず」
噛み付きそうな俺を雅紀が制する
そして、小さい声で囁いた
「…俺の手、握って」
“逃げるよ“
言われた通り、さりげなく後ろに回された手を俺が握ったと同時に
「うわっ」
物凄い力で引っ張られ、その長身の男の脇をすり抜けて行った