TIME is MONEY
第3章 scene Ⅲ
上手くすり抜けたと思ってた
雅紀1人なら確実に逃げる事は出来てた
でも手を引っ張ってるお互いの手の距離と、俺の体分がそれをさせなかった
「あ…っ」
「残念でした」
空いている方の手首を掴まえられる
繋がれた手がガクンと動かなくなって、雅紀が振り返って
“チッ“ と小さく舌打ちをした
「ごめん、雅紀…」
「かずは悪くないから」
舌打ちは俺にじゃなかった
まぁ、俺にだったら後で蹴りでも入れるだろうけど
…って、そもそも “後で“ があるのか?
「何で櫻井じゃねーの?」
「お前には関係ないだろ」
“離せ“ と雅紀が近付くと、俺の手首を掴んでいるそいつの手を更に上から掴んだ
「言われなくても離すよ
折られたら敵わねーもん」
そう言ってあっさりと離された俺は、そのまま雅紀に庇われるように後ろに回されて
雅紀の斜め後ろにいるって、男としてどうよ?とは思うけど
掴まれてた手首に付いてる痣を見たら、そんなプライドは捨てた
痛い思いはしたくない
あの短時間でここまでくっきり付ける力を持つ奴に勝てる訳ない
でも、その男が雅紀に “敵わない“ って言ってたよね?