TIME is MONEY
第4章 scene Ⅳ
雅紀が怖いんじゃない
あの快楽をまた与えられたら、自分が自分で無くなってしまいそうだから
誰だって “気持ちいい“ 事には弱いだろ
無理矢理だろうが何だろうが、目の前にいるこいつがそれを教えてしまったのは紛れもない事実
襲われた恐怖を盾に、自分の中の小さな疚しい気持ちはずっと封じ込めて来たのに
「証拠…って?」
雅紀の言わんとする事はとっくに察している
それでもわざと聞くのは
僅かながら残ったバランスを保ちたいから
だってさ
あの後逃げなかったのは
…いずれまたこうなるって分かってたんだよ、きっと
だけど
「俺は、お前に恋愛感情はないけど?」
雅紀の事を、そう言う目で見た事はまだなくて
「俺もそうなんだけどね」
困ったように笑う雅紀の目にも嘘は見えない
「なら証拠も何も、作りようがないな」
「そうなんだけどね」
何か言いたげな顔
多分それは俺の考えと同じだと思うけど
…自分から言うのはさすがに嫌だ
《カラダだけの関係》
燻った快楽を分かち合う事でここに残る
こんな馬鹿げた事を思い付く程、俺はこいつらに毒されていたらしい