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MITO

第4章 初勤務

 水戸さんは、さらに近付いてみた。


『パキッ!!』


 木の枝を踏み折る音が、足元から聞こえた。


 やっちまった空気が、水戸さんの周りに漂う。


 その何者の動きが止まった。


 隠れなきゃいけない……だが、水戸さんが動いて身を隠す場所が無かった。


 あっても、細い木。とても人一人、隠れるものではない。


 何者かは、ゆっくり振り向いた。


 その顔は、黒い毛で覆われ、耳は長く先が尖り、口は突き出して大きく開いていた。それは、もう人の顔ではなかった。


 鹿は、首もとが裂かれ、すでに息絶えていた。


 水戸さんは硬直する。


 そして、ついに、水戸さんと何者の目が合った。


「ギャアーーーー!!」


 悲鳴を上げて倒れこんだのは、何者の方だった。


「なに、なに、なに、ゾンビ!? いやいやいやいや、噛まないで喰わないで感染させないでーーーっ!!」


 感染は別として、噛む喰うだけは、あなたに言われたくないと、水戸さんは思った。


 だが、やがて何者は落ち着き、持っていたポケットライトで水戸さんを照らした。



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