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君を好きにならない

第8章 真実



それから数時間後


静かにドアが開き


真琴が
部屋に入ってきた


仕事が
ひと段落したんだろう


真琴は
俺が寝たふりしてると気付かず
そっと静かに
布団に潜り込んだ


寝付けないのか
何度も寝返りをする音が聞こえる



眠れねーか…


そりゃそうだよな
男が好きでもねーのに
男に握られたりして…。



その時
真琴の囁くような声が聞こえた


「…向井さん…」



「………」




「…向井さん…

……寝てますよね?


…向井さん…」



真琴は
布団から出たみたいで
俺を呼ぶ囁きは
次第に近づき


「…向井さん」

その声は
もう俺の耳のすぐ側で
聞こえてきた


真琴は俺に
何を話したいんだろう…


「はぁ…」


起きない俺を見て
諦めたのか
真琴は大きな溜息を漏らした


その溜息も
俺に届きそうなほどの
距離


やっぱり
真琴は
後悔してるんだろう

仕事のためとはいえ


あんなこと
されたことを


もう二度と
しないで欲しいと
言いたかったのかもしれない


それなら

目が覚めたふりをして
ちゃんと真琴の
話を聞いて


答えてやってもいい



大丈夫だ、真琴



俺は

もう二度と
お前にそんなことはしない


頼まれても


必ず断るから
心配するな



と。

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