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君を好きにならない

第10章 帰る場所



「他に聞きたいことあるか?」



「いえ…もう大丈夫です」



「そうか」



今日のマサシは

俺が初めて
マサシと会った
あの日のように

少し
うつむき

少し
肩を丸めて

捨てられた
猫のように
目を潤ませていた



「なんか…

今日司さんに会えて
よかったです。

俺…

同じ気持ちの人と
直接話すことって
あんまりないから

ストレスたまったり

自己嫌悪に陥ったり

寂しくて不安で
たまらなくなったりするんです。


だから


今日は

ほんと



嬉しかった」



嬉しかった…


マサシは
そう言いながら
穏やかに笑い

笑った目から
涙をこぼしそうになった


「やべ(苦笑)」

それから
急いで
おしぼりを目に当て


マサシは


息を殺すようにして




少し
泣いていた



俺に見せる

強気な態度のマサシは


偽物なのかもしれない。



「俺…っ…

司さんみたいに
なりたいと
思いました。

初めて会ったとき
堂々としてる司さんが
かっこよくて

憧れてました。


やっぱ

かっこ良すぎて

なれねーなって
わかっちゃったけど(苦笑)」



slowで初めて会った

あの
マサシが
本当のマサシなんだろう


おどおどした
不慣れな態度で
痛い思いして

ゲイだと言える空気の中では
違う自分で
居たかったのかもしれない


「お前はお前でいいんだよ。

本音を言える仲間の中じゃ
尚更自分らしく
してた方がいい」



「仲間?」



「あぁ。
話したりしない奴でも
例えばslowにいる奴らは
どっかで
仲間だと思ってる。
ひどいことする男も
たまにはいるけど
そんな悪い奴ばっかりでもねぇよ。

男が風俗行くみたいに
仲間で
心を舐め合うこともあるんだ。

だから素直に
お前らしくしてた方がいい。

今日話したようなことを
話せる相手が
見つかるかもしれないし
お前を好きになってくれる奴や
セフレができるかもしれねー。

無理して
虚勢張ってるお前には
誰も寄ってこないぜ?」




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