隣は空席のまま…
第8章 不安と天秤
その日の夜、私はホタルの帰りを待た
「お帰り、遅かったね?」
「ただいま…?待ってたの?気持ち悪い」
憎まれ口を叩く割には、口角が上がっている
「気持ち悪いって――――なによ」
少しお酒臭いホタルが冷蔵庫からミネラルウォーターをとり出し私の横に座った
三人掛けのソファが一気に狭く感じる
「マスターから、ホタルの叔父さんの事…聞いた」
「――――…あ、そぅ…で?泣いた?」
「うん、泣いた」
「やだ、冗談でいったのに!マジで?!」
若干引きぎみにホタルが体を離すと…驚いた顔で私を見る
「…な、泣いたわよ……で、私…健診受けるから…
最近、本当に体がだるいし…立ち眩み心配でしょ?」
ホタルの顔を覗きこむと「はぁ?!」と、バカにした顔を私に見せた
「心配なんてしてないわよ!ど~せ、就活疲れでしょ?!ババアの、就活は腰に来るからね!」
「あ!また、ババアって言った!!!
ったく、ホタルの方がジジイでしょ!?最近、髭濃いからね!」
「なっ!!永久脱毛してるわよ!」
「「プッ――――アハハハハ!」」
ホタルが、凄く安心した顔を見せてくれた
拾われた者同志…寄り添えたらいいな
なんて、思ったのは私だけかもしれない
でも、救われたのだ――――…
「ありがとう…ホタル」
「やめてよ、本当に気持ち悪い」