隣は空席のまま…
第10章 壁の大きさ小さ
「――――智子ちゃん…隆太…さんが…どうしたの!?話が見えないんだけど――――」
私は、食い込む智子ちゃんの爪を無理に振り払うことをせず――――…
逆にその手に手を重ね――――…話を聞く体勢にする
「!…とぼけるな…知らない?嘘つけ!
隆太さん…居なくなったのよ!!
私の前から――――!!
浮気…許せなかった、許せなかった、許せなかった!!でも、謝ったから!!謝ってくれたから――――許したのに!」
隆太が――――…居なくなった?
そして、ふと――――…智子ちゃんのお腹に視線が下りる…
「智子ちゃん…妊婦なのに――――…そんなに動いて大丈夫…なの?」
私よりも妊娠発覚が早かった智子ちゃんは…すでに安定期を迎えただろうが…
こんなに情緒不安定で――――…胎児は大丈夫なのだろうか…
「――――…は?あぁ…妊娠?嘘ですよ――――…嘘…
彩芽先輩と…隆太さんを引き離すための――――…嘘!」
私は、ぐらっと――――…世界が歪んだ気がした