隣は空席のまま…
第2章 冷めたコーヒーを…
「―――お待たせ…しました」
「夜分遅くに…お邪魔します―…」
扉を開けると…
女性が立っていた…
穏やかな口調…
寂しげな瞳―…
彼の奥さん―…なのだと…
嫌でも解った―――…
「―――主人…居ますよね……」
「―――――…」
何て答えるのが正解か解らず…私は、何も言えなかった…
「……このまま聞いて欲しいんです…
お願いします…―――主人と―…別れてください…
慰謝料とか…そんなの…請求しませんから…
お願いします――…
…浮気は…許しますから……」
玄関で……拳を握りながら…奥さんが私を見つめる
だが…奥さんの言葉は…私ではなく…
彼に向けられての…言葉だった…
“浮気は許すから”
完全に…
旦那である…彼と話をしている…
私と彼との二人だけの…時間だったのに…
今は…
彼と奥さんの時間になっている……