肝だめし
第9章 終結
「彼女そこにいるよ…」
石原さんの言葉を思い出す
もちろん見えないけれど、すぐそこに彼女がいる気がした
酒も塩も線香もない
ただ誠意を込めて手を合わし、心の中でお詫びの言葉を唱えるのみ
気づけば怖いという感情は消えていた
あれから彼女が現れる事もなく平穏に過ごせてきた
ステレオもその後4年使ったが、あんな暴走はあれっきりだ
だからと言って安心は出来ない
押し入れとあの畦道は繋がっていて、いつ彼女が現れても不思議ではないのだから
こうしてネットで話している事が、そのキッカケになるかもしれない…
頭を上げて緑に囲まれた畦道を見つめた
気のせいか、さっきより明るく感じる
最後にもう一度頭を下げて畦道に背を向ける
そして足を一歩踏み出そうとした時、生暖かい風が頬を撫でた
「いる…」
背中に彼女の気配を感じた
でも振り返らない
俺は歩みを止める事なく、その場から立ち去った
終わり
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