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僕は君を連れてゆく

第23章 魔法の手


先生の手は魔法の手

「大丈夫?背中?」
そう言って咳き込む俺の背中をさすってくれる。

「骨ばっかでしょ?」

「ん?」

「背中…筋肉ゼロ!」

先生の腕は細いけどしっかり筋肉がついていて、
俺を起こしてくれたり、ほかの患者さんを支えたりしているときに腕の力こぶがすごく、カッコいいんだ。

「入院したときよりは…痩せたね。」 


俺の背骨を一本、一本確認するように先生の指が触れている。

そこが、熱い。

俺が13才の時にこの病気がわかって、先生にずっと診てもらっている。

最初はただの病気を診てくれる先生だった。

でも、今は…

「薬、変えてみようか?夜もあまり、眠れないんだろう?」

「ん…」

優しく微笑むその顔に、俺は…

「そうだ、今日の夜は非番で時間できるからさ、あれ、買ってきてやろうか?」

「え?いいの?」

「あんまり、食べてないしな…」

それは、俺がテレビのCMを見て食べたい!と言ったもの。
覚えててくれたんだ…

「ほら、少し休みな…」

布団の上から俺の胸をトントンと叩く。

そして、俺の意識がだんたん遠くなっていく頃に
そのトントンしていた手が俺の頭を撫でてくれる。

ゆっくり、そっと。

その手は俺を怖さから解放してくれるんだ。

「かず…ゆっくり、休んで…」

その声は俺の心をやわらかくしてくれるんだ。


ん?
いつもなら俺が完全に寝入ってしまって、いつ、先生が病室からでたのかわからないのに…

ゆっくり目を開けたら、先生と目が合った。

「ど、したの?」

先生の顔がゆっくり俺に近づいてくる。

反射的に目をつむったら…

俺の唇にやわらかいものが…

チュッと音がして唇が離れた。

「せんせ…」

「ん?」

「もう1回…」


先生の手は魔法の手。
俺を素直にしてくれる。

先生の手は魔法の手。
俺を気持ちよくしてくれる。

先生の手は…

【おわり】


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