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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ

◆◆◆

「…っくそっ!!!」

全身の血液が沸騰しているような気がする。

怒りという感情がこれほどまでに俺の体を支配
したのは初めてだ。

なんで、櫻井と和也が…

俺に浮気をしてるのか?と問いただした本人が
同僚とまさか、浮気してるなんて。

機嫌を取ろうとワインまで準備させたのに…

最近、何も言わなくなったのは櫻井がいたからなのか。
俺の気持ちを理解してくれた訳じゃなかったんだ…

怒りで頭がクラクラする。

自宅について、ゴミ箱を開けた。
白いクリームのついたケーキフィルムが見える。

目障りだ。

俺はゴミ箱を蹴り上げた。

怒りは収まるどころか、どんどん、沸いてくる。

「あ゛ぁー、もう、なんなんだよ!」

子作りを拒否したら、浮気された。
なんて、恥ずかしいんだ。
そんな男だったのか?

最低だ。

冷蔵庫から缶ビールを出して飲む。

櫻井のことも仕事のパートナーとして尊敬していたし、頼りにしていた。

それなのに。
裏切られた。

しかも、一番、最低な形で。


怒りは収まらず、だんだん、それは悲しみに変わっていって。
空き缶が俺を囲む量になった。

「どうして…」

和也はどうしているのだろう。

あの店の駐車場に一人で置いてきてしまった。

櫻井のところにでもいるのかな。

それなら、それで、もういいや。

ソファに体を預けて目を閉じた。

瞼の裏に写るのはさっきの泣き叫ぶ、和也の顔。

和也。
和也にとって、俺ってなに?


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