僕は君を連れてゆく
第69章 夏の思い出
このご時世だから外にロケなんて行けないと思っていたけど、それがそうでもなくて。
スタッフのみんながたくさん考えてくれて外にロケででれることになった。
それに、この企画、俺にかなり合っててどのロケよりも楽しんでるんだよね。
一緒に参加してくれてる芸人さんも俺と合ってて…
今日も楽しいロケになりそうだなぁ。
少し早くロケ現場についた俺は周囲を散策することにした。
この木、ランタンぶら下げるのに良さそう。
ここの枝を火起こしてから使うことにしよう。
この石を積んで竈とか造りたいなぁ。
川の流れる音に誘われるように歩いていくと目の前に大きな大木があった。
見上げると吸い込まれそうな気がしてきた。
「うわぁ…」
ついそう呟いてしまって。
思い出が甦った。
昔、みんなでこんな山にロケに来たことがあった。
カブトムシをみつけて俺と相葉ちゃんは触れたけど翔ちゃんたちはビビってて面白かったなぁ。
そこにも川があって足だけ入ろうなんて言ってたのに、悪ノリして水かけあってたのが本気になって最終的に全員びしょ濡れになって衣装を買い取らされたんだよなぁ。
「うふふ…」
「何笑ってるんですか?」
「え?」
後ろから声をかけられて、思い出から今に戻ってきた。
一緒にロケをやる芸人さんがいてニヤニヤしてる。
「木を見上げて笑ってて…どうしたんですか?」
確かに。
木を見上げて思い出し笑いしてるなんて…やべぇ奴だな。
「昔、嵐のみんなでこんなとこにロケに来たなぁって思って」
「へぇ」
思い出したことをベラベラと喋った。
「夏の思い出も全部、嵐なんですね」
「え?」
「あの時も、この時もって。全部じゃないですか!しかもどれもめちゃくちゃ楽しそう!」
いいなぁ、俺なんて…とお得意の自虐の話をこんどはしてる。
申し訳ないけど全然、頭に入ってこない。
俺の夏はアイツらがいて。
アイツらにも俺がいて。
来年の夏はどんな夏なんだろう。
来年の夏なんて考えるのはやめよう。
だって、この夏もアイツらと…
俺はスマホを木に向けて写真を撮った。
それをグループメールに送る。
4つの既読がすぐについた。
「うふふ…」
「大野さん、聞いてます?」
「え?聞いてない!」
ゲラゲラ笑うスタッフと肩を落とした芸人さん。
さぁ、頑張ろう。