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喫茶くろねこ

第9章 夏 ~恋の季節と、占いと~

…なんで、マスターに兄貴のことがわかるんですか。

『それは、私がテレパシーを使えるから、かな』

テレパシーって、兄貴にはまだ会ったことないのに?

『お前の母親には会っただろう。まぁ、そんなことはどうでもよい。とにかく、お前は自分を尊重するんだ。卑下するな。お前には、才能がある』

僕に才能なんか…。

『猫の言葉が聞き取れるのも一つの才能だよ。私のテレパシーが全ての人間に伝わるわけではないのは、知ってるだろう。お前の母親も聞き取れないし、ここにくるお客の大半がそうだ。今日の女の子…お前が千夏ちゃんって言ってたあの子もそうだな』

でも、そんな才能あったって、ここでしか使えないじゃないですか。社会に出てから何の役に立つって言うんですか。

『ほら、またそうやって否定的に考える。お前はな、人と恋愛する前に、まず自分を好きになれ。自分を尊重しろ。自分を愛せ。お前が恋愛をするには、まずそこからだ。自分のことが嫌いな人間が、見た目が好みのタイプとか、そんな上っ面だけで恋愛しようとしたって、絶対に失敗する。自分のこと、大好きになるんだ』

それって、ナルシストってやつなんじゃ?

『そうじゃない。自分すらも愛せないやつに、人を愛することなんて出来ないよ。それに、自分自身からも嫌われてるようなやつ、他人から愛されることもないよ』

……。

『話が、長くなったな。今日はもう帰ってゆっくり休め』






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