
アイシカタ
第1章 Kiss
「あれ?松本先生は?」
ガラッとドアを開けて入ってきたのは、やっぱり大野だった。
キョロキョロと保健室を見回して松本の姿を探す。
「松本今いないよ。多分出張」
「うっそ」
目をぱちくりさせて驚く大野。
「なんか用でもあったんすか?」
「用ってほどでもないんだけど…。俺この時間暇だからよくココきてるの、暇つぶしに」
「暇つぶし…」
正直意外だった。
松本ってのは濃ゆい整った顔立ちの、言わば「ザ・イケメン」って感じで。
大野はそれと対照的に、柔らかい美男子って感じ。
だからその2人が話しているところを想像出来ない。
きっといい画にはなるんだろうけど。
「意外とか思ってるでしょ」
そんな俺の心を読んだかのように大野が訪ねてきた。
「…まあ、はい」
「んふふ、これがね、結構話し合うんだよ。
一時間なんてあっという間だよ?」
にこにこと楽しそうに話しているが、別に俺は2人の意気投合具合に興味ある訳では無い。
それより絆創膏を探さなければいけないのだ。
適当に相槌をうって再び中断されていた絆創膏探しを始めた。
「…ところで何を探してるの?」
「絆創膏。知らない?」
「どっか怪我でもしたの?ここだよ」
よく分からない薬品が置いてある棚の引き出しから、絆創膏を取り出してくれた。
こうもあっさり見つけられると何だか虚しい気持ちになるな。
