
アイシカタ
第1章 Kiss
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「松本ー?あれ、居ねえな」
血の流れる右手を抑えながら、保健室を覗いている。
なぜこんな状況になったのか。
それは英語の次…つまり今の時間の体育で、ぼーっとしていたら転んでしまった。
というそれだけの情けない事情。
まあダルい体育をサボれるのならいいか、と思って保健室に来たわけだが。
どうも今日は松本がいないらしい。
話し相手にしようとしたが、いないなら暇なだけだ。
一瞬戻ろうか、とも考えた。
でもさすがに血を垂れ流しにしたまま戻るわけにはいかないから、絆創膏だけでもほしい。
ドアノブに手をかけたら鍵はかかっていなかったから、申し訳ないが入らせてもらおう。
少し重めのドアを開けると、保健室ならではの消毒液の匂いがした。
とりあえず歩き回って絆創膏らしきものを探すが、意外と見つからない。
松本と話すくらいしかここには来ないから、どこに何があるかが全くわからかいのだ。
しばらく保健室を徘徊していると、ふとドアの先に人影が見えた。
松本が戻ってきたのか?
なんて少しでも嬉しく思ったのが恥ずかしかった。
「松本せんせー?」
その影も声も、明らかに松本のものではなかった。
むしろこの声…
大野…?
