いとしいとしというこころ
第11章 まっさら
どうやって部屋を出てきたのか。
どこをどう歩いてきたのかよくわかってない俺の腕がグイッと掴まれて。
その引っ張った方へ顔を向けた。
雅にいが泣きそうな顔で俺の前に立ってる。
なんか変。
なんで雅にいが泣くの?
泣きたいのは俺だよ。
泣くこともできない俺は無気力なまま腕を振りほどくこともせずに突っ立って。
「和くん…」
あんなに好きだったひとの声を聞きたくないって思った。
なにも聞きたくない。
そして大好きなひとの手を取る。
握りしめるんじゃなくて、
「…離して。」
離れていくために。