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りる綴り Ⅱ

第2章 2017.03.01~


~ミニ短編~



「これ、刃が逆さま」
でっかい業務用に近いスライサーを眺めながら、にのがキッチンから俺を呼んだ

「え?ちょっと見せて」
そんなはずはない、とそれをにのから受け止って
レバーを弄くり “合ってるよ“ と渡す

「あ、そう?切れないからおかしいなと思って」

「刃の位置が違ってたからね。治したから気を付けてよ?凄く切れるから」

にのがそれに頷いて

だけど何だか離れたくなくて、きゅうりを持つにのに再度 “気をつけて“ と手元を見つめた

「だいじょうぶだって……あっ」

「にの?」

「…やっちゃった」

苦笑するにのの親指から滴る真っ赤な血

みるみるうちに溢れるそれは、あっという間にシンクを染め上げていく

「ちょ…っ!大丈夫?!」
「ジンジンしてるけど、平気」

水で傷口を流しながら顔をしかめるにのの指からは
水と一緒に絶え間なく鮮血が流れていて

止めてからティッシュで抑えるけど、すぐにそれは白から真っ赤に色に変えていく

「…思ったより深そう」
痛むくせに、強がって笑うにのの手を取って

「とりあえず、止血しなきゃ」
俺はぎゅっと指の付け根を抑え、傷口を口に含ませた

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