
りる綴り Ⅱ
第2章 2017.03.01~
口の中に鉄の味が広がる
なかなか収まる気配のないその味に、さすがにこのままじゃダメみたいだと判断した俺は
口を離し、傷口にガーゼを当てて握っていた付け根にきつくテープを巻いた
「病院行こ。深いから」
「このくらい平気だって…」
嫌がるにのを無視し、半ば無理矢理連れて行った近くの病院
テープのおかげが、散々流れた血は止まってはいないけど溢れる事はなくなっていた
“こんな事くらいで“ と唇を尖らせるにのだけど、なかなか止まってくれない血はショックみたいで
病院に着く頃にはすっかりおとなしくなっていた
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「参った……」
“これだけ深いなら縫った方がいいね“
傷口を見てすぐに、医者から言われ
すぐに処置をされた帰り道
にのは包帯の巻かれた指を見て溜め息を吐いた
「こんな大げさになるとはなー…」
「仕方ないよ」
すっかりしょげているにのの背中を慰めるように軽く叩く
「暫く濡らしちゃダメだって」
「うん、だからお風呂は手伝ってあげる」
「え…いや、片手使えるし…」
「だーめ。上手く出来ないんだから!」
にのの怪我は可哀想だけど
ちょっとだけ楽しみが出来たと喜ぶ意地悪な俺が顔を覗かせる
