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ありがとう

第1章 ありがとう

 それから月日は流れ秋……いつものように家に帰るとそこにはクロが居なかった。優真に電話をした。

「もしもし!」

「おー柊か。慌ててどうしたんや?」

「クロが家にいないの!」

「ほんまか! 俺も探す。見つけ次第連絡するから」

「ありがとう」

 私は外に出てクロを探し始める。

 夕方になった頃、優真から電話がかかる。

「もしもし」

「公園に来てくれ」

 優真の声は暗かった。嫌な予感がした。

「分かった」

 私はそれだけ言うと電話を切り、走って公園に行く。

「柊……来たか」

「クロ?」

 優真の腕の中にいたのは間違いなくクロで。私はクロに手を伸ばす。いつもならニャーと鳴いてすり寄ってくるのに今日はない。ピクリとも動かない。

「クロにお別れを言おうな」

「クロの体、でもまだ温かいよ?」

 だけど動かないのが現実で、私の目からは涙が零れ落ちた。

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