その瞳は誰を見てるの?
第1章 その瞳は誰を見てるの? 1
翔さんの視線に気付いた大野さんが、翔さんと僕の間にすっと入ってきた。
すっかり帰り支度が整っている大野さんは、ニコっと笑って僕を見た。
思わず目を逸らしてしまう。
「ん?どしたぁ?」
ニコニコしながら僕たちに言う。
ナニ考えてんだろ…この人。
そのままニコニコしながら翔さんの腕を掴んだ。
ナニ?
僕の目の前でナニするつもり?
翔さんは相変わらず優しい瞳で僕を見てる。
こんな状況だからか、少し困った表情にも見える。
大野さんの手に力が入ったのがわかる。
そのまま翔さんの腕を片方の手でしっかり握り、もう片方には翔さんの荷物を全部持ち、楽屋を出ていこうとする。
「えっ…??」
さすがに焦ったらしい翔さん。
「あっ…しょおさ…!?」
何処に行くの?なんで二人だけで?
心穏やかじゃない僕。
バタンっ…無情にもドアは閉まってしまった。
気持ちが乱れていくのが自分でもわかる。
乱暴にバッグを持ち、目深にキャップを被り、
「お疲れ…お先…」と。
「潤くん…大丈夫?」
こんな僕に声なんかかけ辛いだろうに、静かに話しかけてくれたにの。
「ん?なにが?」
「いや…なんでもない…お疲れ…」
ごめん、にの。