欲望ベイベー
第8章 急下降。
「俺だったら、本命の彼女とケンカして突き離しちゃったら・・・
真っ直ぐ家に帰ります。
何かあったらすぐ迎えに行きたいから、ヤケ酒なんかせずに家で車のキー握りしめてモヤモヤしてるんじゃないかな。」
N「え・・・」
「仲直りしたら、今度こそ奢って下さいね?」
ヒラヒラと俺に手を振って、
運転手に頭を下げるとタクシーの扉がバタンと閉まった。
N「・・・・・。」
このまま自分の家に帰りたい。
逃げたい。
「どちらまで?」
N「ああ、えっと・・・」
でも、どうせ帰ったって1人でメソメソ泣くだけだ。
それなら全てハッキリさせて思い切り泣いた方が良い。
・・・よし。
相葉さんに、会いに行こう。
動き出したタクシーから、チラリと後輩に目をやる。
がんばってーと口パクで手を振ってるのが何だか可愛くて笑ってしまった。
近いうちに、うんと高い酒でも飲ませてやろう。
翔さんにお店聞いておかなきゃな。
タクシーに揺られながら、ドキドキと痛む胸を少しでも無視したくて。
どんな酒が良いかな、なんて今考えなくて良いような事をぼんやりと思っていた。