誰も見ないで
第8章 記憶
視界に入ったキーホルダー
正樹君が付けてたやつ、だよね?
来る前にはあんなところに落ちてなかったし
届けてあげなきゃ
「あら瑞稀どこ行くの?」
「正樹君が忘れ物したみたい。追いかけて届けて来る!」
「急いで転んだり飛び出したりしないようにね!」
「はぁい」なんて呑気な返事をしながら、その時は特に深く考えずに家を出た
ちょっと走ったらすぐにお兄ちゃんと正樹君の後ろ姿が見える
背も高いし2人ともすごく目立つから
すぐ見つかって良かった
そして声をかけようと息を吸い込んだ直後
「俺にとっては湊斗の方が大切なんだから、自分の方をちゃんと大事にして欲しい!」
と正樹君が大きな声で言ったことでびっくりして足を止まってしまった
何か大切な話をしてるのかも、と判断して割り込んでしまわないように近くの角に隠れる
正樹君なんて言ってた?
湊斗の方が大切って
誰と比べてなのかはわからない
けど
正樹君にとってお兄ちゃんが大切って、どういう意味なんだろう
自分の考えを中心に考えすぎて、もしかして2人は幼馴染以上の関係なんじゃないかって勘ぐってしまう
そんなことない、と言い聞かせて隠れたところから顔を出してみた